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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)196号 判決

原告 宇都木昭蔵

被告 国

訴訟代理人 河津圭一 外一名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 〈省略〉

理由

原告が被告に対しその主張のような請求権を持つていたかどうかは暫くおき、被告の主張する時効の抗弁について判断する。

被告は損害が事故当時発生したと主張し、原告は、損害は継続的に発生していたと主張する。しかし本件のような事故の場合土地の不法占有等とは異り、損害は存在しているかも知れないが継続的に発生しているものとは認めることができない。そうでないとすると不法行為について時効制度というものが無意味になるであろう。被告は、原告が損害及び加害者を知つたのは事故当時であると主張し原告はこれを争うのであるが、本件弁論の全趣旨によれば、原告は本件事故当時右各事実を知つたことが認められる。右認定に反する証拠はない。従つて原告の請求は不法行為に基づくものであるから、本件事故の発生した昭和二七年五月六日から三年間の経過により原告の請求権は消滅したものといわなければならない。原告は催告の事実を主張するが、昭和二七年五月六日から三年間を経過した後になされた催告を主張しているのであるから主張自体理由がない。

従つてその余の点を判断する迄もなく、原告の主張は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判断する。

(裁判官 石田哲一 滝田薫 前川鉄郎)

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